11品目の野菜の残留農薬を検査した高知県農業技術センター

残留農薬に関する独自の調査や研究をおこなっているのが、全国各地に設置されている農業技術センターです。研究の結果が地元の農業生産に利用されることも多いので、地域の活性化に貢献しています。高知県にも農業技術センターがありますが、ここでは、この施設で実施された、11品目の野菜に関する残留農薬の分析について、詳しく紹介します。

→現在の農薬と残留農薬への取り組み

11品目の野菜の残留農薬を検査した理由

高知県農業技術センターでは、地元で生産された野菜11品目の残留農薬を分析して、研究したことがあります。研究が実施されたのは2011年から2013年にかけての時期で、研究を担当したのは農薬管理を担当しているセンターの職員です。

高知県農業センターでこのような研究がおこなわれた理由としてあげられるのが、食べ物に関する消費者の関心の変化です。食の安全に関する消費者の関心は非常に高くなっていて、安全に食べることができる食品研究の一環として、食品に残されている農薬の研究が検討されるようになりました。

残留農薬に関する消費者の関心は全国レベルでも高まっていて、国ではこうした事態に対応するためにポジティブリストという制度を制定しました。これにより、残留農薬の基準はそれまでよりも厳しいものになっています。

ポジティブリストの導入とともに全国に普及したのが性能の高い分析装置で、高速液体クロマトグラフ質量分析装置は検出感度や同定能力が優れていることから、特に広く普及しています。ですが、野菜に含まれている多くの成分を分析するためには、優れた装置を効果的に利用するためのさらなる研究が不可欠であったために、実施されることになったのが11品目の残留農薬分析です。

分析で使用されている新しい技術

高知県農業技術センターで実施された11品目の野菜の残留農薬分析では、いくつかの新しい技術が使用されています。こうした新しい技術が使用されているのは、野菜に含まれている多くの成分を正確に調べるためには、それぞれの成分について適切な測定条件を明確にする必要があったからです。

また、それぞれの野菜には分析のために邪魔になる異物が混入されていることが多かったために、それらの異物を取り除く目的でも新しい技術は使用されています。この分析に使用されたのはAgilent社が製造したLC-MS/MSという装置で、試料の注入量などに関する4種類の条件を設定することにより、160種類を超える成分の分析が可能な製品です。

11品目の野菜の分析で使用されているのは、固相カラム法もしくはQuEChERS法という方法です。これらの方法を使用することにより、それぞれの野菜に含まれている100種類以上の成分を調べることが可能になりました。

これらの方法を採用することにより、0.01ppmオーダーまで定量分析ができます。それぞれの方法には固有の特徴があり、固相カラム法は一般的な分析方法として多くの実績があるために、残留農薬の成分の量を定める時に利用できます。

QuEChERS法は操作が簡単なことが特徴で、スピーディーに実施することができるため、スクリーニングに使用しやすい方法です。

分析に使用されたキュウリとピーマンの品種

分析に使用された11品目の野菜は、高知県の各地で広く栽培されている品種です。分析された野菜の一つがキュウリで、ZQ-7という品種が使用されています。ZQ-7は栽培用の品種として改良されたキュウリで、毎年9月から11月ごろが種まきの時期です。

果実が実った時に、つるをおろして成長するのが大きな特徴です。気温が下がる冬でも大きな果実を実らせることができる品種で、日光の量が少ない時期でも安定して成長します。病気に対する耐性も強く、カビや褐斑病に抵抗力があります。

高知県は冬や春に収穫できるキュウリの全国的な生産地であるために、ZQ-7が分析の対象として選ばれています。ピーマンも分析に利用された野菜の一つですが、選ばれたのはトサミドリという品種です。トサミドリは高知県農業技術センターが2009年に品種登録したピーマンで、類似の品種としてトサミドリ2号もあります。

果実に強い光沢があることがトサミドリの外見の特徴になっていて、表面のしわが少ないので見た目の美しさがあります。果実の大きさがそろっていることもトサミドリの特徴になっていて、商品としても販売しやすいピーマンです。

11品目に含まれているオクラとナス

高知農業センターで実施された11品目の残留農薬分析では、高知産のオクラも分析の対象になっています。分析に使用されたオクラはアーリーファイブという品種です。アーリーファイブは日本で生産されているオクラの中でも非常に一般的なもので、切断した時に切り口が五角形になるのが大きな特徴です。

夏から秋の時期に収穫できるオクラで、色は濃いめの緑色です。味が良いことで人気があり、生でも柔らかいために、少しお湯で加熱するだけで食べることができます。高知県の主要な農作物の一つであることから、残留農薬の検査対象に選ばれています。

分析された野菜の中にはナスも含まれていて、使用されたのは土佐鷹という品種です。土佐鷹も高知農業センターが2009年に品種登録した育成品種で、高知県が生んだナスとして知られています。土佐鷹は竜馬というナスを葯培養して作られた品種で、同じように葯培養された千両という品種と掛け合わせて誕生しました。

果肉にボリュームがあるのが土佐鷹の特徴です。今後、高知県内の広い地域で栽培される見込みがあることから、残留農薬の分析用に選ばれました。

具体的な分析の方法

高知県農業センターで実施された11品目の残留農薬分析は、添加回収試験法という方法で実施されています。固相カラム法による添加回収試験法では、まず磨砕均質化試料20グラムを採取して、アセトンを150ミリグラム添加しました。

その後、抽出やろ過などの作業をおこない、一部を減圧濃縮しています。次にアセトニトリルや水で予備洗浄をしてから、1分間通気乾燥をして再び減圧濃縮をしました。最終的にはフィルタにろ過し、アセトニトリル2ミリリットルに定容しています。

QuEChERS法による添加回収試験法では、メソット抽出キットや分散SPEキットを利用して、分析をおこなっています。

安全な食品生産に生かされる残留農薬の分析

高知県農業技術センターで実施された11品目の野菜の残留農薬分析について紹介してきましたが、複数の成分を一度に分析する方法を確立できたことが、この研究の大きな成果です。高知県で栽培されている野菜も多く分析されていますが、残留農薬を正確に調べる技術を研究することで、さらに安全な野菜作りが実現することを目標にしています。